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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)26号 判決

神戸市北区山田町上谷上字鍜治屋の上四五番地

控訴人

平井平一

右訴訟代理人弁護士

平田雄一

神戸市兵庫区水木通二丁目一番四号

被控訴人

兵庫税務署長

森本武彦

右指定代理人

高田敏明

杉山幸雄

山藤和男

桜井進

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴人

(一)  原判決を取り消す。

(二)  控訴人の昭和五四年分所得について、被控訴人が昭和五六年四月一六日にした控訴人に対する所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも異議決定により取り消された部分を除く。)を取り消す。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨。

二  当事者の主張

次に付加する当事者の当審主張のほかは原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

1  控訴人

所得税基本通達三三-六の五及び三六-一二の規定は、昭和五六年二月五日に改正ないし新設されたものであるから、被控訴人において、右改正、新設日以前の同五四年六月四日に発生したと認定した本件譲渡所得に右規定を適用して本件処分をなすことは許されない。

2  被控訴人

控訴人の右主張のうち通達三三-六の五の規定が控訴人主張の日に新設されたことは認めるが、控訴人の主張は争う。

三  証拠関係

原・当審各記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求を棄却すべきであると判断する。その理由は、次に付加するほかは原判決理由説示と同じ(ただし、原判決一六枚目表四行目の「第九号証、第一〇号証の一、二、」を削除する。)であるから、これを引用する。(控訴人の当審主張について)

所得税基本通達三三-六の五の規定が昭和五六年二月五日に新設されたことは当事者間に争いがなく、前記乙第一二号証及び成立に争いのない乙第一三号証及び弁論の全趣旨によると、所得税基本通達三六-一二の取扱い適用について、昭和五六年二月五日直資三-二により、同項中「引渡しがあった日」とあるのを「換地の取得の日」とする旨改正されていることが認められる。

しかし、右各通達は、国税庁が下級行政庁(課税庁)に対し所得税法三三条、三六条についての解釈運用の基準を示したものであり、右各通達が右各法案の趣旨に反するものでなく、かつ右改正及び新設によって、それ以前における本件類似事案に対する課税よりも控訴人に対する本件課税が不利益となるものではない(三六-一二の改正はその文言の意義を明確にしたものにすぎず、三三-六の五の新設によって、従前の取扱によれば本件譲渡土地全部について譲渡があったものとしていたのを、改正によって、本件譲渡土地面積から本件取得土地面積を控除したものを譲渡があったものとして課税対象とする取扱となる。)のであり、控訴人の当審における主張は失当である。

二  それゆえ、原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、注文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井玄 裁判官 高田政彦 裁判官 礒尾正)

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